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細胞は生まれ変わっているらしい

  • jille8jiji
  • 2017年2月20日
  • 読了時間: 3分

更新日:2020年10月12日

町内の新年会へ行った。

40歳~80歳代の男性の多い中での飲みありきの食事会に出たのは、

もう覚えていないくらい久しぶりだった。

年代も様々だったので思っていたより面白い時間が過ごせたのだけど、

楽しいか楽しくないかなんていう話しはどうでもよくて…

今回の新年会で驚いた事があった。


お酒を飲まない私を通り越して、

私の席の前後左右で「酒を注ぎあう」という恒例のアレが始まった。


あちらこちらで話しが盛り上がり、席を立ってお酌をし合う。

まだグラスにビールがたっぷり入っていても、有無を言わせず注がれる。

注がれたら注ぎ返す。


ビール瓶を片手に「飲みが足りないんじゃないのぉ」と言う。

「ほらほら~」と言う。

「どうだい最近?」と言って注ぐ。

隣に来たかと思うと無言で注ぐ。

これはもうビール瓶を持っている者が王様なのだ。

王様の言うことは…ゼッタイなのだ。


そんなことを思いながら周囲の光景を眺めていて、ふと気が付いた。


水商売で私の身体に深く染みついていたはずの

《男+酒=お酌》という条件反射が全く消え失せていた。


「酒と男」が前後左右でうごめく中、

私は自分のペースで食べ、自分のペースで飲み、

話しかけたり話しかけられたりしながらただただ普通にコミュニケーションをとっていた。


一般的には当たり前の事かもしれないのだけど、

若い頃に母の店で薄汚く染みついてしまった

場末のスナック的 エロ話し、愛想笑い、お酌、煙草に火、

こういう酒の席で一つも出なかったことに軽い眩暈すら覚えた。



人の身体は約37兆個の細胞によって構成されているという。

そして一日に3000~7000億個の細胞が生まれ変わっている。


胃は約5日、

肌や髪は約28日、

骨は90日・・・

このようなサイクルで細胞は入れ替わり、

身体のほぼ全ての細胞が5~7年で新しく生まれ変わる。らしい。


命ある限り体内は宇宙のように消滅と誕生を繰り返し生まれ変わっているのに、

不確かで不完全で不安定な「心」や、

すり込まれてしまった「イヤな条件反射」は、

なかなか変えられず、もがき苦しむこともある。


現状から脱却したいという思いの中で一歩踏み出しても、

結局いつの間にかまた元の場所に戻ってしまったり


「このままじゃダメになる」

「変わりたい」「変われない」という暗闇・息苦しさを

都会の人混みの中で誤魔化そうとする

かつての自分のような少女の高笑いを私は知ってる。


細胞の入れ替わりは体内の流れのなかで起きていて、

血液や排泄、呼吸、命と言う流れに乗って細胞は生まれ変わっているのだとしたら、

謎多き「心」を抱える迷える人間は、

自分の生を、

一歩また一歩と進み続けることが唯一の道なのだろうか。


生という流れに乗って。

流されるのではなく流れる。

自らの流れ(生)の中で歩き続け、

強く固く握りしめていたものを手離したり、

果てしないものを手に入れたり、


そんな日々の途中で、

パブロフの犬はメトロノームの音を聴いても唾液が溢れなくなり、

確かな「一匹の犬」になっていることもあるんだなと、


そう思えるような2017年の新年会での出来事だった。

←二十歳ごろの自分の場末感。

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